マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学などの米国のトップクラスの研究者らが結集して、1秒間に1万件という超高速なトランザクション処理機能を備えた次世代仮想通貨「Unit-e」を共同開発するプロジェクトが発表されました。既に研究開発が進められており、2019年後半の公開を目指しています。

高速決済こそ仮想通貨のキラーアプリに

この次世代仮想通貨「Unit-e」の計画は、2019年1月17日にスイスのツークで設立された「分散型技術研究機構(Distributed Technology Research,DTR)」による最初の開発プロジェクトとして発表されました。オープンソースの技術開発で進められます。

DTRには、マサチューセッツ工科大学(MIT)やスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校といった全米各地のトップレベルの大学の研究者たちが集結しています。「Unit-e」の開発に当たっては、ヘッジファンドのパンテラ・キャピタル・マネジメント社(Pantera Capital Management LP)などが支援を行います。

DTRは発表の中で、ビットコインをはじめとする従来の仮想通貨がまだ広範に利用されるには至っていない原因の一端はスケーラビリティー問題にあると指摘。特に、ビットコインにはその構造上、取引速度やスケーラビリティーの制約があり、日常の決済への利用にあたっての障害になっているとしています。

その上でDTRは、今後の仮想通貨を広く普及させる上でのキラーアプリケーションになるのは高速な決済処理システムであると強調。こうした特長を備えた新仮想通貨を作り出すため、ビットコインの何千倍、クレジットカード決済に比べてもはるかに高速な決済処理を可能にする技術を開発・集積し、それらをつぎ込んで「Unit-e」の開発を進めていくとしています。

DTRでは、こうした新仮想通貨・高速決済処理システム「Unit-e」を、2019年下半期に稼働開始させることを目指しています。

研究開発成果はすべて公開

「Unit-e」開発の中核となる分散型システムのエンジニアたちのチームは、ドイツの首都ベルリンに置かれ、多様な産業分野でプロトコルや開発ツール、API、ハイスケールソフトウェアの構築に携わってきた経験を持つ技術者が世界8カ国から集まっています。

「Unit-e」では、1秒間に1万件のトランザクション処理が可能となることを目指しています。これは従来の仮想通貨の1000倍以上、クレジットカードと比べても数倍速いものとなります。既存の仮想通貨で1秒あたりに処理できるトランザクション数は、ビットコインのでは3.3~7件、イーサリアム(ETH)では10~30件です。クレジットカードのVISAでも平均約1700件にとどまっています。

ビットコインのスケーラビリティー問題は、その設計上の問題に起因しています。トランザクション数が増大すれば、それを記録するための新ブロックが頻繁に生成されるようになります。1ブロックの記憶領域には上限があるためです。

開発チームでは、トランザクションを迅速化するとともにスケーラビリティー問題を解決するため、ビットコインなど従来の多くの仮想通貨に用いられているブロックチェーンの技術について、根本から見直しています。彼らはトランザクション処理を飛躍的に向上させるため、コンセンサスアルゴリズムや、シャーディング、さらに決済チャンネルネットワークについても、新たなメカニズムを構築しています。

こうしたブロックチェーン技術に関する研究開発の成果について、DTRではすべてを公表する方針としています。

「Unit-e」技術運営委員会の委員長を務めるイリノイ・アーバナ・シャンペーン大学(University of Illinois Urbana-Champaign)のアンドリュー・ミラー(Andrew Miller)助教授によると、既に研究開発成果の一部は10本を超える論文にまとめられ、各分野の専門家へ査読のため送付されているとのことです。同助教授は「革新的な研究成果はトップクラスの研究者たちを共同研究へと引きつけ、技術革新のペースをいっそう加速させることになるだろう」と述べています。

開発資金を拠出するパンテラ・キャピタル社の最高投資責任者(CIO)で、DTRの評議会メンバーでもあるジョイ・クラグ(Joey Krug)氏は、「Unit-e」が実用になるかどうかは比較的早期に分かるだろうとした上で、「インターネットではなく3Dプリンターのように、良いものではあっても実用性はないと判断されて消えていく可能性もある」と述べています。

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