韓国の仮想通貨取引所コインネスト(Coinnest)がコンピューターのトラブルにより、仮想通貨のビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、法定通貨のウォンなど計約60億ウォン(約6億円)相当をエアドロップ(無償配布)してしまったことが分かりました。受け取ったユーザーの一部がこれを即座に売却したため、大量売りでビットコイン価格が一時急落する事態となりました。

ゲームトークン配布のはずが…

コインネストの発表によると、同取引所は2019年1月18日夕方に開催されたイベントの参加者400人以上に対して、「ウィーゲームトークン(We Game Tokens,WGT)」というトークンエアドロップしようとしたところ、コンピューターのエラーにより、WGTではなく仮想通貨ビットコインイーサリアム、韓国の法定通貨ウォンがユーザーに無償配布されてしまったとのことです。

取引履歴巻き戻しで対処

このトラブルを受け、コインネストはサーバーコンピューターの点検のため、9時間にわたり仮想通貨取引を停止しました。翌19日までにコンピューターはエラーから回復し、取引は再開されました。

同取引所は、手違いによるエアドロップで失った資産を取り戻すため、コンピューターのエラーが発生する直前の1月18日18時33分18秒(現地時間)の時点にまでロールバック(取引履歴の巻き戻し)を行いました。

3億円相当は戻らず

エアドロップが行われた直後から、韓国の仮想通貨コミュニティーでは、この話題で持ちきりとなり、中には、間違って入金された仮想通貨をさっそく取引所外のウォレットに移したとか、すぐに売却したなどと報告するユーザーもいました。

実際に、WGTの代わりにビットコインを受け取ったユーザーの一部は、即座にこれを売却したとみられ、大量売りによりビットコインの価格は瞬間的に1BTC=50ドルにまで急落しました。

コインネスト側は、10人以上のユーザーに連絡をして返還を求めたところ、大半のユーザーはこれに応じたとしています。一方で、連絡が取れず返還請求ができないユーザーもいるとのことです。1月19日時点で同取引所が取り戻した金額は、失った資産の半分の30億ウォン(約3億円)相当にとどまっています。

取引所側の過失で賠償責任も

コインネストの関係者は、今回の無償配布はコンピューターエラーに基づくもので、基本的に無効なものだと主張。「これが異常な事態であることは十分認識可能であるにもかかわらず、受け取った仮想通貨を売却、換金したことは、刑法上の横領罪や窃盗罪に該当する可能性がある」として、失った資産を取り戻すため法的措置を検討中であることを明かしています。

この点について現地の弁護士は、「取引所の約款に該当する規定があれば、今回の措置は法的には問題ないように思われる」としつつも、「今回の事態がコインネストのコンピューターのエラーに起因することから、同取引所側にも過失がある」と指摘。逆にコインネスト側にユーザーへの損害賠償責任が生じる可能性があるとしています。

これに対し、コインネスト側は「今回のコンピューターエラーに起因する取引について、ユーザーの被害を補償する予定は今のところない」としています。

今回のトラブルに際して、コインネストが取引履歴をロールバックする措置を取ったことも、今後議論を呼びそうです。ロールバックにより取引履歴が抹消された時間帯に仮想通貨の売買で利益を上げた投資家がいた場合、その利益が無になってしまったからです。

コインネスト側は「取引所発足以来、前例のないコンピューターのエラーでお客様にご迷惑をおかけした。二度とこのようなことが起こらないようシステムを強化する」と謝罪しました。しかし、サーバー点検に伴う9時間の取引停止やロールバックがユーザーに与えた被害については「正確な被害規模はつかめず、現実的に被害補償は難しい」として、責任は取らない姿勢を示しています。ただ、この問題についてはさらに社内で協議を続けるとも付け加えています。

一時は韓国で1位の仮想通貨取引所

コインネストは2018年6月にサービスを開始した仮想通貨取引所で、韓国のゲームアプリ開発企業ハンビットソフト社が株式の25%を出資しています。コインマーケットキャップの集計によると、1日の取引高では韓国で第5位、世界では第51位となっています。2018年8月には一時、ビットサムなどを抜いて韓国で取引高トップの座に立ったこともあります。

同取引所をめぐっては、2018年4月に、当時の最高経営責任者(CEO)のキム・イクファン(Kim Ik-hwan)氏が顧客からの預かり資産を自分の口座に移し替えたとして、横領容疑で韓国の警察当局に逮捕されたと、現地紙に報じられました。このとき同取引所は、顧客の不安を解消するためとして、経営体制を刷新することや、第三者機関による顧客資産のチェック体制を確立し、その監査内容を公表することなどの改善策を発表しています。

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