米ロサンゼルスで2019年1月、仮想通貨ATMが機械ごと泥棒に盗まれる事件が発生しました。奪われた端末はベーカリーカフェの店内にあった小型のもので、防犯ビデオには犯人が肩に担いで持ち去っていく様子が映し出されています。米国では仮想通貨ATMが急速に普及しつつありますが、高額な現金が保管される端末だけに、セキュリティー面の対策が急がれそうです。

ハンマーで壁から取り外し持ち去る

事件があったのは1月20日未明。米カリフォルニア州ロサンゼルスのブレントウッドビレッジにあるベーカリーカフェ「ベルウッド・ベーカリー(Belwood Bakery)」に空き巣が入りました。

防犯ビデオの映像では、フードで顔を隠した1人の男が巨大なハンマーで店のガラスドアをたたき壊して侵入、店内の壁に設置されている仮想通貨ATMに直行し、ハンマーを2度ほどたたきつけて端末を壁から取り外しました。さらに犯人は端末をたたき壊そうと試みましたが、端末はびくともしませんでした。すると犯人は端末を肩に担ぎ、店の外へ運び去って行きました。

米CBSテレビの報道によると、このベーカリーカフェは2018年11月18日と12月21日にも空き巣の侵入を受けています。12月21日には2人組のフードをかぶった犯人が、11月18日にも別の犯人グループが、いずれも今回の事件と同じく店の入り口のガラスドアを壊して侵入しています。いずれの際にも犯人は何も奪うことができずに立ち去っています。

現場周辺の地区では犯罪が多発しており、このベーカリーカフェも最近2度もガラスドアを壊されたため、店の入り口に「夜間は店内に現金は残されていません」と、泥棒に向けた注意書きを掲示していました。

今回の犯行が過去2回の犯人と同一犯なのかや、犯人が実際に現金の入手に成功したかどうかは明らかになっていません。

被害に遭ったベーカリーカフェは、ベトナム難民の一家が1994年に創業した家族経営の店で、おいしいペストリーと親身なサービスで定評があるとのことです。盗まれた仮想通貨ATMは、外部の業者が設置したものでした。店のオーナーのひとりであるデレク・トラン(Derek Tran)氏は「ビットコインのことはよく知らない」と話し、盗まれた仮想通貨ATMの端末に現金が入っていたかどうかも分からないとしています。

毎月のように訪れる泥棒に3度にわたり入り口のガラスドアを破壊されたトラン氏は、「うちは小さな店であり、経営面で大打撃だ」と嘆いています。

米国を中心に急増する仮想通貨ATM

仮想通貨ATMとは、現金で仮想通貨を購入したり、逆に手持ちの仮想通貨を現金に変えたりすることのできる無人端末のことです。2013年10月にカナダのバンクーバーに初めて登場し、その後世界各国に広まっています。

仮想通貨ATMの情報サイト「Coin ATM Radar」の集計によると、1月27日現在、仮想通貨ATMは世界76カ国に4228台が設置されています。なかでも、米国にはその6割の2550台が設置されており、カナダには708台と、北米地域が大半を占めています。

もちろん仮想通貨はネット上のデータにすぎないので、仮想通貨ATMの中に仮想通貨そのものが入っているわけではありません。仮想通貨を購入する場合は、端末に現金を入金するとQRコードの印字された領収書が出てくるので、これを使ってネット上で自分の仮想通貨ウォレットに送金することになります。逆に仮想通貨を現金に換える場合には、自分のスマートフォンのウォレットからATM端末に表示されたアドレスに仮想通貨を入金する手続きを取ることで、現金が引き出されます。

中には仮想通貨の購入だけしかできない端末もありますが、その場合でもATM端末内には仮想通貨の代金の高額な紙幣が保管されていることが想像できます。それだけに泥棒に狙われることも十分想定されますが、今回のケースでは、端末の設置状況に防犯面でかなりの問題があったようです。

まず、犯罪が多発している地区の、ドアを破るだけで侵入できる飲食店内に設置されていたこと。また、犯人はその場では端末をこじ開けて現金を盗み出すことはできなかったものの、端末が軽量で、しかも簡単に壁から取り外すことができたため、やすやすと持ち去られてしまったことです。セキュリティーがしっかりしている金融機関のATMでは、機械ごと持ち去るなどということは、重機でも使わない限りできません。

ベーカリーカフェだけなら夜中に入っても盗むものは何もないでしょうが、仮想通貨ATMが設置されているとなると、ガラスのドアはあまりに不用心でした。この端末は外部の業者が設置したもので、店の経営者は仮想通貨について何の知識も持っていませんでした。

仮想通貨ATMの運営業者は、伝統的な金融機関とは違って新興のベンチャー企業がほとんどのため、セキュリティー面の認識が不十分であったことが考えられます。今回の事件を教訓に、今後は設置場所の立地や設置状況などのセキュリティー対策を強化していくことが必要となりそうです。

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