ブロックチェーンを使って、電力の使用者である工場や店舗の間で余剰電力を効率的に融通し合えるシステムを、富士通が開発しました。再生可能エネルギーの導入拡大など脱炭素社会に向けた取り組みを大きく後押しする技術で、同社では2019年4月以降の実用化を目指しています。

電力使用量調整の効率が4割向上

富士通株式会社(本社・東京都港区、田中達也社長)と株式会社富士通研究所(本社・川崎市、古田英範社長)は2019年1月30日、ブロックチェーン技術を応用し、電力の需要家(工場や店舗などの電力の使用者)間で不足・余剰電力の取引を実現するシステムを開発したと発表しました。

電力会社と需要家が協力して電力の使用量を調整する「デマンドレスポンス(DR)」の取り組みが近年進んでいますが、これまでは電力会社からの調整要請に対して需要家が対応できず、DR制御の成功率が低い場合があることが課題となっていました。

そこで今回、両社が開発した電力取引システムでは、ブロックチェーン上に、需要家ごとの自家発電や節電で生み出される余剰電力を需要家間で効率よく融通する仕組みを構築しています。

両社では株式会社エナリス(本社・東京都千代田区、小林昌宏社長)の協力を得て、2018年の夏季と冬季の2期分において、需要家20拠点分の消費電力の実績ログを使用して、需要家間での電力融通が可能になった場合のシミュレーションを実施しました。その結果、DRの成功率が従来の方法に比べて最大で約4割向上することが確認されました。

再生可能エネルギー導入を促進

DR制御の成功率向上は、DRに参加する需要家の増加につながり、安定した電力供給や、DRの狙いのひとつでもある再生可能エネルギーの導入拡大を実現することが可能になります。

本システムに搭載した技術は、2019年2月1日まで東京ビッグサイトで開催中の「ENEX2019 第43回地球環境とエネルギーの調和展」に出展されています。

開発の背景

再生可能エネルギーの導入など脱炭素社会に向けた取り組みが進む中、電力会社と需要家が協力して電力の使用量を調整するDRが注目されています。DRでは、電力が足りなくなると予想されるピーク時間帯に、節電に貢献した需要家へ対価を支払うことで、電力使用量の削減や平準化を図ることを主な目的としています。

実際には、電力会社からの調整要請を受け、需要家ごとの節電量をコントロールするアグリゲーターが仲介する形で、需要家ごとに節電量を割り当てます。要請された期間に電力削減量を達成した場合に、電力会社からアグリゲーターが報酬を受け取り、その報酬を需要家のそれぞれの節電量に合わせて配分します。

しかし、需要家によっては、所有する自家発電機を起動する際の発電量の不足や、電力消費量の突発的な増加により、節電量を達成できない場合があり、報酬が受け取れない事案も発生しています。

脱炭素社会を実現するためには、DRの成功率(要請された節電量を達成し報酬を受け取れた割合)を高め、需要家がDRに参加した場合の投資効果を確保し、参加者を増加させることが重要となっています。

しかし、従来はアグリゲーターが各需要家と1対1のやりとりを行い、節電量の配分や達成可否の確認を行ってきました。需要家が節電量を高い確率で達成するためには、節電量が不足している場合に、他の需要家の節電量の一部を迅速に融通し合う取引が有効と考えられますが、DRではその仕組みが導入されていませんでした。

電力融通取引の透明性をブロックチェーンで保証

今回開発された電力取引システムは、富士通研究所がこれまでに開発したブロックチェーン技術を活用し、アグリゲーターと契約した需要家同士で余剰電力を相互に融通するものです。

DRでは、短時間で節電の可否を回答しなければならない場合があります。そこで、まず取引システムに登録されている売り要求から融通可能な電力の総和を求め、買い要求の中から買える分だけ順番に素早く承認処理を確定する技術を開発し、迅速に可否を回答することを可能にしました。

また、可否の回答後に、確定済みの買い要求に対し、売り要求を無駄なく配分することで、取引を最適化する技術も開発しました。

この2つの段階からなる電力融通取引技術を適用した取引システムをブロックチェーン上で構築。これらの取引を記録することで、電力融通の取引結果の透明性を保証し、確定した売り買いの取引結果(電力の節電量)に基づいた報酬の正確な配分が可能になっています。

この取引システムにより、要請された節電量が難しい場合でも、他の需要家の余剰電力を自らの節電量の目標に合わせて迅速に購入・補てんすることが可能となり、節電量を安定して達成できるようになります。この結果、DRの普及を支援し、脱炭素社会の実現に向けた取り組みの促進につながることが期待できます。

富士通は、事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際イニシアティブ「RE100」に加盟しており、脱炭素社会の実現に取り組んでいく方針を表明。その一環として、今回開発したシステムの実環境での検証を進め、2019年度以降の実用化を目指すとしています。

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