韓国政府は2019年1月31日、イニシャル・コイン・オファリング(ICO=仮想通貨による事業資金調達)に関する3カ月間にわたる調査の結果と、今後のICOをめぐる方針を発表しました。同国ではICOが禁止されていますが、多くの企業がこの禁止措置を迂回して海外で韓国国民向けにトークンの販売を行っていると指摘。また、ICOは極めてリスク性が高いことが判明したとして、今後も全面禁止措置を維持する方針を示しています。

危険性の高さが政府の調査で判明

韓国首相府直属の政府政策調整局が1月31日発表したところでは、政府は国内でのICOを認めるよう要望する声を受けて、2018年9月から11月まで、24社の企業とそれぞれのICOプロジェクトについて調査を実施。韓国政府はこの3カ月にわたる調査の結果、ICOは極めてリスクが高いことが改めて裏付けられたとして、今後も国内のICOに関しては全面的な禁止措置を維持していく方針を決定しました。

韓国政府は「われわれは今後も、ICOの体系化については慎重であり続けることになる」と表明。ICOのガイドラインを設定した上で認めるべきだとする意見があることについては、「もしICOに関するガイドラインを提示した場合には、危険性の高い投資オプションであるICOを、われわれが承認したと解釈される可能性がある」と指摘しています。

2017年9月からICO全面禁止

韓国政府は2017年9月、国内でのあらゆる形態の仮想通貨を通じた資金調達を禁止しました。これは、詐欺的なICOの事例が世界各国で多数報告されていることを踏まえ、国内の投資家を保護することを目的としたものです。規制当局である韓国金融委員会(FSC)は2018年10月、ICOを非合法とした決定は現在も維持されていると改めて強調しています。

こうした中で、韓国の国会議員の一部からは、ICOについては全面禁止策を転換して、政府の統制下でスタートアップ企業のための新たな合法的事業資金調達手法とするため、明確なガイドラインを策定しようとする動きが出ていました。2018年5月には、国内のICOについては、投資家保護策が取られていることを条件に合法化する内容の法案が議員立法で国会に提出されています。

また、韓国の弁護士の全国団体である大韓弁護士協会も2018年11月、同国政府や国会に対し、ブロックチェーンを基盤とした仮想通貨産業の発展を支援するとともに投資家を保護するため、法的な枠組みを迅速に確立するよう求める異例の声明を発表しました。

一方、2018年12月には、同国のブロックチェーン関連のスタートアップ企業プレスト社が政府や国会を相手取り、ICO禁止措置は憲法違反であるとして訴訟を提起しています。

同社のカン・キュンウォン最高経営責任者(CEO)は、提訴に踏み切った理由として、政府がICO禁止措置の発動から1年以上を経過してもICOのガイドライン策定や法整備をしようとしていないと批判、「ブロックチェーンのスタートアップ企業として、われわれは政府のICO禁止措置や、国会の法整備の怠慢により、多大な困難に直面している。私はこれらの点が憲法違反であることの確認を求める」と表明しています。

24社のICOの実態を調査

このような声を受けて、韓国金融監督院(FSS)が昨年9月から11月にかけて、ICOの調査を実施しました。韓国政府はこの調査の目的について、韓国企業が実施したICOを分析し、適切な対応を確立することであるとしています。

調査に当たっては、ICOプロジェクトを実施している24社の国内企業に協力を要請。これらの企業にアンケート調査を行うとともに、それぞれのICOプロジェクトのホワイトペーパーとプレスリリースを調べ、22社について調査結果を分析しました。

ほとんどが国外にペーパーカンパニー設立

調査報告では「22社のほとんどが、海外に登記上の本社を置くペーパーカンパニーを設立し、海外でICOを実施しているが、これらのICOはいずれも韓国市場を対象としている」と指摘。韓国の国内企業が多くのICOを海外で実施しているため、政府の禁止措置が迂回されていると強調しています。

これらの企業はICOのためにシンガポールをはじめとする海外に子会社を設立しており、その資本金は1000万ウォン(8945ドル)以下で、現地企業の幹部を含めて平均3人の従業員しかいないとされています。

ICOトークンの価格は平均68%下落

それぞれのICOで発行された新しいトークンは、平均して4つの取引所で取引され、その価格は取引開始後、平均68%も価値が下がっていました。

FSSの調査報告ではまた、セキュリティートークンの発行や取引、投資資金の売却など、違法なICO活動の事例も見つかったと指摘。「会社の紹介、事業計画、財務諸表など、重要な投資情報が欠落している事例があった。特に、ICOで調達した資金の使用方法に関する開示はなく、ほとんどの企業は金融当局の要求に答えることを拒否した」としています。

友だち追加